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第2話 婚約 【後編5】

2007/01/11 16:59
「待て!キラ。」

どこか強制力のある声で言われたそれにキラの手は一瞬空をかくようにして止まる。
しかし、僅かな昇順の後、何も言わずにドアノブを回した。

カチャリ、と小さな音がし、ドアが開く。
微かに風が吹き、廊下の冷たい空気が生暖かい部屋に滑り込んだ。


そのまま出て行こうとすでに背を向けているキラに向かって
カガリは先ほどとは全く違う人物のような落ち着いた声音で言う。

「お父様の言うとおり婚約して…結婚して世継ぎを産む。
それがもちろん皇女の義務だってことくらい分かっている…。
そしてそれは私にとって完全に不幸になることはない道だ…内乱など起こらない限りはな。」

そこまで言ってカガリは何かを諦めたように一度床に視線を落とした。
拳を握り締めるその手が微かに震えているのを発見し、
ミリアリアは驚いて思わず息を飲み込む。
しかし、次に視線を上げたとき、カガリの目は定まっていた。

「だけど…それでは幸福にはなれないんだ。
完全な幸福は得られない。私はそんなことは嫌なんだ…!」

どこか懇願に似た言葉をキラは瞳を閉じて聴く。

目を閉じていても頭に今のカガリの様子がはっきりと分かる。
今にも泣きそうなカガリの顔が容易に想像できる。
幼い頃からずっと一緒だったのだから。

だけれどその彼女を泣かせているのは自分なのだ。
それも自分の醜い嫉妬のせいで。

無垢で、浅はかで、鈍感な彼女。


でもとても愛おしいヒト。







けれど…手に入らない。
16年間傍に居て、自分は彼女の視界に入ることもできないのだ。

そこまで考えて、キラは悲しみが滲む表情を押し殺して言う。

「絶対の幸せなんてどこにも無いよ?」

極めて冷静な口調のキラにカガリは胸を張って答える。

「見つけるさ、私が。」

きっぱりと放つように言われたカガリの言葉にキラは一瞬ピクリと指先だけを動かした。

「そう…」


「キラ!お前、何かあったんだろっ!?だからそんなにおかし…」



おかしな勘違いをしている彼女。滑稽に見えるほどだ。
僕を苦しめているのが自分だとは1ミリも思っていない。


「僕はただ…カガリの泣き顔を見たかっただけなんだ。」

張り付いたような笑みを再度浮かべ、ただそう言ってキラは扉を閉めた。

残酷なことにそれだけは唯一の真実だった。







ねぇ、お願いだから僕の為だけに泣いてよ、












閉じられたドアの向こう側から紡がれた小さな呟きは窓の外、
月だけが知っている。







君は残酷だよね、本当。













2005.12.22.Thursday 16:12
【第2話完】
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