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第3話『金の姫とピンクの妖精のウワサ』【後編】

2007/01/22 18:15

「なんで見てないんだよっ!全く本当にお前って奴は…;」

「『お前』の婚約者なんだぞ!?それをちゃんと自覚してるのか!?」

呆れきった声と顔で2人に同時に言われ、アスランは少し不機嫌になりつつ答える。

「いや…俺は別に顔なんてどうでもいいと思っているし…。」

ぼそぼそと言い訳をするアスランに言いようのないもどかしさを感じ、ディアッカは身を乗り出して抗議した。

「お前は馬鹿か!?どーせどこの国にも性格がいいお姫様なんていないさ。
いつも人々に傅かれて、甘やかされて…。そんな中で育った女なんてみんな碌な者じゃない。
だからオヒメサマのマシな所は顔しかないんだよ。」

飄々と何気なく失敬なことを言うディアッカにイザークはなんだか言い訳をしなくてはいけない気持ちになり、口を挟む。

「おいディアッカ!そこまで言うことはないんじゃないか?
中にはちゃんとした姫だっているだろう。」

「…例えばラクスとかか?」

ワインを飲みつつさらりと言ったアスランにイザークは思わず返事を返す。

「そうだ。ラクス様は……っておいぃぃっ!!!!何を言わす貴っ様ぁ!!!///」

またもや余計なアスランの一言で始まったイザークの暴走を止める為、ディアッカは慌てて口を開いた。

「まぁまぁ落着けって!イザーク。それより…」

にやり、と妖しく微笑むディアッカをアスランとイザークは顔を見合わせて怪しんだ。

「…なんだ?」

「じゃあ今見てみようぜ!そのアスランの婚約者ってのをさ!」

まるでこの上なく面白い玩具を見つけたような子供の顔で言われ、アスランは一瞬軽くしかめっ面になる。

「そんな見世物にするようなものじゃないと思うが…」

「ごちゃごちゃ言わずに見せろって!な?イザークも興味あるよなぁ?」

にやにや笑いながら肩を組んで言われた言葉にイザークは「まぁな…そんなに言うなら見てやらんこともないが?」とふんぞり返って答える。
それを見て、アスランは苦笑しながら観念して懐に手をやった。

「分かったよ。ほら、これだ。」

そう言って机の上に出されたのは一枚のポートレート。
よく見る為にイザークとディアッカは椅子を寄せ、身を乗り出す。

するとそこには……




その1枚のポートレートに映っていたのは1人の少女だった。
年は15、16くらいだろうか。
ひと目で王室で1番豪華な一室だと分かる部屋でごてごてと装飾された椅子に背筋をピンと伸ばし、上品に腰掛けている。

一言で言えば、彼女はとても綺麗な少女だった。

髪は長く艶やかで、腰につくかつかないかぐらいの長さ。
目はほんの少しつり気味で勝気そうに見える。
だが目鼻は理想的な位置に配置されており、それだけ見れば非の打ち所がない、非常に整った容貌だ。

ただ、一つのことを除いては。

そしてそれは何かというと、どうにも形容しがたい表情だった。
平たく言えば…ひどい『顰め面』だ。


1・2・3……

写真を見てから3秒、3人の動きはぴたっとものの見事に止まっていた。
しかし、ディアッカの噴出しを合図に、2人は大声で笑い出した。

「あっはっはっは!!!!なんだこの写真!本当にこれ見合い写真のつもりか!?!」

目に涙まで溜めてディアッカが言うのに、イザークは笑いを必死で堪えつつ返す。

「ディ、ディアッカ!そんなに笑ったら失礼…ぶっ!!」

「なんだよ~!お前も笑ってんじゃん!」

楽しそうに笑う2人とは対照的にアスランはまだ写真を凝視したまま停止していた。
そのままぴくりとも動かないアスランに2人はさすがに心配になって、肩を揺さぶって心配する。

「おい、アスラン!大丈夫か?」

がくがく揺すられてそこで初めて気付いたように困惑した表情を見せるアスランに2人は納得したような、同情したような声音で言う。

「お前の気持ちは分かる…でも仕方ない。受け入れろ。」

「そうだ、アスラン。受け入れるんだ。いくらラクス様と天と地ほど違う女だと言ってもだな…」

顎に手を当て、しみじみと言うイザークにディアッカは半分笑いながら言う。

「そこまで言うことないだろ?イザーク。表情抜きにしてみれば結構綺麗な女だぞ?」

「いや…でもこの表情は…!!」

そこまで言ってまた写真を見、再度馬鹿のように笑い出した2人をアスランはただぽかん、と見つめていた。

「いや、あの、俺は…」

戸惑いながらも何か言おうとするアスランだったが、その口を後ろから多少無理な姿勢でディアッカが塞ぐ。

「いや…もう何も言うな、アスラン。お前の言いたいことは分かってるからな!」

「あぁ。ショックだろうが、受け入れるんだ。随分…その…か、堅そうな女性だが貴様の顔なら多分いけるだろう。」

「ま、今日はゆっくり休めよ。ショックだろうがなんとか乗り切れよ!」

「ザフトの王子ならそれぐらいで動揺するな!あと、明日は1人でラクスの所に行って謝るんだぞ!?分かったな!?」

そこだけ強く念を押してイザークは言い、ディアッカは使用人たちに声をかけ始めた。

「はいはい!ということで、今日はもう皆これで下がってくれ!」

手をぱんぱんと小気味よくと打ちながら言われて、なんとかして欠片でもいいから王子の新たな婚約者を見ようとしていたメイド達は一斉に残念そうな顔になる。
そんなメイド達の様子を見、ディアッカは悲しそうな表情を作って、まるで役者のような口ぶりで言った。

「今のアスラン様は傷ついておられるんだ。
今ぐらいは…そっとさせておいてくれないか?」

「は、はいっ!承知致しました。」

ディアッカの不気味なまで丁寧な演技に気圧されたのか、メイド頭はどもりながらも頷いて返す。

「じゃ、また明日な。」

「おいアスラン!明日は絶対ラクス様のところに…!!」

「おい、もういい加減言い過ぎだぞイザーク!!」

言い争いながらすたすたと去っていく2人にアスランは1言も返せないまま、無常にもドアは閉められる。
しかも使用人までも連れて。



完全に1人になった部屋は静かで、廊下からはまだ堪えきれないらしい2人の笑いと婚約者の顔をあれこれと予想するメイド達の声が漏れ聴こえてくる。

アスランは数秒間、扉を見つめて溜息を吐いた後、またその問題の写真に目をやった。
するとさっき見た際と1寸も変わらぬ少女が写真の中に。



「…異質、だな。」



一言呟いて一度目を閉じる。頭に思い浮かべて、口元に浮かぶのは微かな笑み。

ごてごてと飾られた部屋と服、少しの隙もないように手入れされた髪や肌。
そんな中、彼女の表情はなんというか…野性味溢れていて。

確かにこのアンバランスさはどこか笑えてくる。
でも、それはディアッカ達のような笑いとは違い、期待を含んだものだった。



「カガリ、か。」



そう呟くアスランの口元には先程より深く刻まれた微笑み。
そしてそれは穏やかで期待に満ちた、どこか優しさを含んでいる笑みだった。






2006.3.19.Sunday 18:49
訂正【2006.3.19.Sunday 23:43】
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