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第4話 『足掻き』 【後編】

2007/04/13 00:07
周りが私とキラとの結婚を頻繁に噂しているのは知っていた。
それは召使いたちの悪意のない噂や令嬢たちの嫉妬の視線、あるいはアサギたちのからかいから。
けれどキラの気持ちなど意識することはなかったし、むしろ手のかかる弟のように思っていた。




この気持ちが恋に変わるなんてこと、本当にあるのだろうか?



そんなことなど一生ありえない、心のどこかで思っている。




そんな・・気がした。






第4話 『足掻き』 【後編】





ぼんやりと先程のやり取りを思い返している内に、いつの間にか謁見の間に来ていたらしい。

まだ若い女官が僅かに緊張した面持ちで令をし、両側から把手に手を掛ける。
重圧な趣きある音と共に完全に扉が開かれるのを待ち、カガリはゆっくりとその1歩を踏み出した。




<続きは下をクリックして下さい↓>


真っ白な大理石の床を力強く踏み、王の前に足音高く進み出る。
永遠に続くとも錯覚してしまいそうな長い時間。
父は微笑みも、怒った様子もなく玉座に座り、こちらを静かにただ見つめている。
どこか無機質な表情に少し怯む。
しかし、こんなことで意見を言わないで終われるか。


「お父様。」

「何用だ?急に大切な話があるなどと…私も暇な身ではないのだから用があるのだったら手短に話しなさい。」

静かな、けれどどこか空気をぴりりと緊張させる父の声にカガリは一瞬躊躇する。
しかし、一息置いて早鐘のように鳴る気持ちを無理やり落ち着かせて言葉を発した。

「お父様、あのふざけた御触令はなんなのですか?」

厳しいカガリの言葉にウズミは表情を一つも変えることなく答える。

「ふざけた?そんな御触令は私は一切出していないが。」

「ではあれは一体なんだと仰るのですか!私の名で…あのような御触令を出すなんて!
私はあんなもの認めていません。」

「なぜだ?」

「え…」

ふいに聞かれ、驚いて顔を上げウズミの顔を見る。
すると先程より視線を鋭くし、じっとこちらを見つめる父の姿が見えた。

「なぜお前は賛成できないのだと言っているのだ。」

見るものすべてを震わす重圧のある声音にカガリは内心怯えながらも必死に言い返す。

「それは…!まず、私の意志を勝手に決められたことです。私も一人の人間であることをお父様はお忘れになっています。」

「それだけか?」

必死に言ったことを一言で往なされ、一瞬カガリは怯む。
しかし、それを気取られないように次の言葉を続けた。

「いいえ!それだけでは…」

「何だ?相手が気に入らないのか?他に結婚したい人がいるのか?」

「ち、違います!」

言いながらどこか躊躇いを含んだ目線を下に逸らしたカガリにウズミは容赦ない視線を降り注ぐ。

「ではなんだ?言って見なさい。」

促され、カガリは今度は逆に睨むような視線をウズミに向けながら口を開いた。

「ザフトとの先頭で私たちはたくさんの被害を被りました。物的被害は確かに時が経てば必ず解決できる時がくるでしょう。
しかし、人的被害は?大切な人たちを亡くした思いは一体どこへやればいいのですか!?
そんな蟠りがある国の王子と…それもなぜ今私が結婚しなくてはいけないのですか!」

激しく問い詰めるカガリにウズミはただただ冷静に答える。

「では、お前はこれ以上戦いを続け、国民を疲弊させ、オーブよりザフトの人達を多く殺せばそれで気が済むのか?」

「それとこれとは話が別です!私が言いたいのは…」

「いいや、同じだ。お前も分かっているのだろう?この戦争でオーブもザフトも、多大な被害を被った。
恨みや憎しみも多々あるだろう。しかし、それはどこかで止めなければいけない。
そうでないといつかはどちらも滅びてしまうぞ。
わが国が疲弊したところをついてくる、別の国も出てくる可能性もある。
そんなことは決してあってはならない。」

「分かっています。でも…!」

言葉を発する度、力をなくしていく自分に戸惑いつつも
カガリは必死に言い返そうとする。
しかし、王としての正当性のあるウズミの言葉に曖昧なカガリの言葉は次々と絡めとられていく。
あまりの重さに耐え切れなくなり、叫ぶようにして「父様!」と言うとやっとウズミはその口を止めた。

「ではなんなのだ。なぜお前は結婚をそのように拒む?お前たちは幸運にも年も近く、国力の差もつり合いがとれている。
その上ザフトの王子は今の王以上に平和を愛し、温厚な性格で非常に聡明と聞いておる。花婿としては申し分ない。」

「そんな…でも、私の意志は…!」

「カガリ、これは国民のためなのだよ。」

今までとは違う、どこか優しさと憐憫の混じった声音で言われて、カガリははっとなる。


「他に理由がないのなら従いなさい。お前はオーブのたった一人の王女なのだ。それを理解しなさい。」

「でも、お父様…!」

それでも尚言い募るカガリにウズミは自らの掌に顔を埋めた。
そして長いため息の後、

「いいか、カガリ。これは父親として頼んでいるのではない。このオーブの国王としての命令だ。
努々、それを忘れることの無いようにしなさい。」


突き放した言い方にカガリは一瞬頭が真っ白になった。

これまで、ウズミは自分の意思を大抵聞いてくれていた。
カガリが納得できないことは納得できるまで辛抱強く言って聞かせてくれたし、また、ウズミのほうが折れることもあった。

そんな権力に頼ることなく、諭すことで人の心を動かすことができる賢い父親の姿こそがカガリにとって何より尊敬すべきものであった。

だが、その父が今初めて権力に託け、「私に逆らうな」と言ったのだ。










2006.10.14.Saturday 20:45
<訂正>2006.10.23.Monday 3:22
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