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第1章 偽りの愛を、君に

2006/12/23 12:45
第1話 『 決意 』






「父上…今なんとおっしゃいました?」

広い謁見室に若い男の声が響く。
その声は困惑しきっており、それがこの国の王子の声だと思うと少し頼りない。
が、先程の王の言葉はいつも冷静なアスランを困惑させるには十分なものだった。

「だからオーブの姫との婚約を決めたと言ったのだ。」

王、パトリック・ザラは同じ言葉を繰り返すのを嫌い、少し眉を顰めつつそう返事を返す。


「待って下さい!それはオーブと同盟を結んだということですか!?
父上は…あの国を…オーブを許したとでも言うのですか!?」

アスランは激しい口調で問いただすようにして言う。
その表情は紛れもなく憎しみが滲み出ていた。


「早とちりするな!アスラン。
私はオーブを許したわけではない。」
憤慨の表情を浮かべながらパトリックは言う。

「…ではどういうことなんですか!?」

アスランの視線はまだ鋭い。


「オーブと我が国は長い間戦ってきた。
皆、国や家族を守る為に精一杯な。だが…」

パトリックはそこで一旦言葉と途切らせ、窓の外を見遣る。
その顔には濃い疲労の色が見えた。

「もう国民達は疲れきっている。反乱も起こる可能性も高くなってくるだろう。
すでに国民の生活を圧迫しているからな。
それに何よりオーブは資源が豊富だ。消耗戦となると…」

「そんなことは私も分かっています!
しかし、ここで引き、オーブの属国に成り下がるなど…
絶対にできません。」


短いが、鋭いほどの沈黙の時が2人の間に流れる。


「…それはお前の気持ちだけでの意見か?」

少しの昇順の後、アスランははっきりとパトリックの目を見据え、言葉を発する。

「いえ、私の気持ちだけではありません。
これがザフトの為だと、そう思ったからです。
もうあの国に…好き勝手にさせることなどあってはならないのですから。
もう2度とあんなことは…繰り返したくない。
国民にあんな思いは絶対にさせません。
私は…その為ならどんなことでもやるつもりです。」

そう言うアスランの瞳は危険なほど鋭い光を宿していた。

迷いなど一切ない碧の瞳とパトリックの瞳が正面からぶつかる。
ぴんと張り詰めた空気の中、アスランの喉が緊張のあまりごくりとなった時、パトリックはふいに笑みを浮かべる。
それはひどく満足そうで、どこか傲慢な笑みだった。

アスランは予想外の父親の反応に驚き、いぶかしむような表情をする。

「父上…?」

「その言葉を待っていたぞ、アスラン。
お前にはこれから重要な任務を果たしてもらう。
相当つらいものになるから覚悟しておけ。」

どこか楽しげに言うパトリックにアスランは困惑しきった顔をする。

「一体何の話ですか?」

「先程、オーブの姫との婚約を決めたと言っただろう?」

「はい。」

「それは本当の話だ。お前にはオーブの姫と結婚してもらう。」

「…しかしそれはっ!」

「まぁ待て。しかしそれは嘘のものだ。
お前はオーブの姫を…いや。オーブの国民を騙すんだ。
騙して、信用させて、惚れさせて、操れ。
そして内側からオーブを壊す。完全に…な。」

そう低く言うパトリックの顔は完全なる憎悪に満ちていて、
思わずアスランは悪寒を覚えた。

「それをお前にはやってもらう。
難しいとは思うが、お前ならできると私は信じている。
任せたぞ、アスラン。ザフトはお前に掛かっている。
これはもう『あんなこと』が二度と起こらないようにするためなのだ。
お前が失敗したら、また戦いが始まる。そして長引けばザフトは終わる。

失敗したら……命はないと思え。」

親とは思えないパトリックの辛辣な一言にアスランは一瞬、
心臓を鷲掴みされたような気になる。
が、そんな気持ちを押し隠し、ザフトのためと自分に言い聞かせ、決意に満ちた、だが静かに暗い声で返事を返す。

「はっ…!」



「目にもの見せてやる。待っていろ、ウズミめ…」



静かに勝利を夢見、オーブをあざ笑うパトリックの横でアスランは1人、静かに目を閉じた。


ザフトの為…その為なら俺はどんなことだってやり遂げる。
多少の犠牲も…仕方がないことだ。


そう強く思い、アスランは拳をギュッと握る。
次に目を見開いた時、アスランの心は決まっていた。
碧の瞳が鋭い光を帯びる。





オーブの姫には悪いが、騙されてもらおう。




代わりに極上の甘い、甘い虚の愛を君に。
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