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壊してしまいたい

2007/04/15 01:03

真夜中に限りなく近い時刻、コツコツと小気味よい足音が廊下から響いてくるのを耳にし、
カガリは一瞬だけ緊張して薄絹の夜具の裾をギュッと握った。
だが、その足音の中に馴染みのリズムを感じた瞬間、心から安堵してその音が止まるのを待ち、自ら扉を開いた。
その顔には先程の強張った表情など欠片もなく、反対に口元に笑みを湛えて。

「お前、こんな時間に通信もなしに来るなよ。」

口調はぶっきらぼうなものだったが、そんなものなど露ほども感じさせないカガリの嬉しそうな顔にアスランも口元を綻ばせた。

「すまない、ちょっと早急に見てほしい書類が出てきたんだ。中に入ってもいいか?」

「あぁ、もちろん。」

気軽に言ってカガリはアスランを部屋に招きいれ、扉を閉じる。

「で?私に見て欲しいことってなんなんだ?」

僅かに開いた窓から吹く優しい風に髪を弄らせながらカガリは聞く。
その風の中には南国の花の香りが含まれており、それは緩やかに2人を包む。

「これだ。」

そう言って差し出されたのはごく薄い書類らしきもので。とても重大なものとは思えないくらいのものだった。
一応手にとってちらりと捲ってみるが、やはり急ぎの書類ではない。

「アス、いや…アレックス。これ別に明日に回しても…」

疑問に思いながら書類から顔を上げかけたカガリだったが、アスランの顔を窺う前に目の前が真っ黒に染まる。
気付いた時にはもうアスランの腕の中にいた。

「…アレックス?」

カガリが控えめに囁くとさらに力を込めて抱きしめられた。
まるでそうしないとカガリが擦り抜けていってしまうかのように。

強く、強く。カガリの身体が軋むほどに。

「アスラン?」

少し苦しかったけれど、怖くはなかった。ただその温もりが愛しくて。
もう1度、ただ優しく名前を呼ぶ。
すると一瞬躊躇したような間の後、アスランは静かに口を開いた。

「あの書類は口実。ただカガリに会いたかっただけだ。」

「こんな真夜中にか?」

くすくす笑いながらそう言うと振動がアスランにも伝わったようで、くすぐったそうにぴったりとくっ付けていた身体を離し、カガリの顔を見つめた。
その瞳はどこか切なさそうに、つらそうに細められている。

「真夜中だから。」

そう言って押し倒した先は柔らかい布地が張られたソファー。
そしてそれは軋むことなく柔軟に2人の体重を受け止める。

「抱いていいか?」

「え…」

あまりにも直球に囁かれた言葉に一瞬息が詰まる。
けれど合った視線は逸らせないままだ。

「なんでそんないきなり…」

言っている内にもみるみる顔が赤くなっていくのが自分でも分かり、さらに恥ずかしくなりながらカガリは言う。
しかしアスランの表情は変わらない。

「駄目、か?」

「駄目じゃない…けど。」

そこまで言って、カガリは気まずさから視線を逸らした。
しかし、それをアスランは許さない。
顎を優しく掴まれ、正面を向かされる。
いつもと変わらない、綺麗すぎるくらい澄んだ翠の瞳。
けれどその中にカガリは僅かだが確かに不安の色が映るのを見た。

「セイランに…なにか言われたか?」

鋭いカガリの指摘にもアスランはうろたえることはなかった。
しかし、その瞳をちらっと逸らしたことではっきりとカガリは確信する。


「大丈夫か?お前。」

溜息と共に吐き出した言葉は重く部屋に響いた。
しかし、それにアスランはわざと軽く答える。

「何がだ?」

「この…馬鹿。」

そう言ってカガリはアスランの肩に顔を埋めた。
なんだか今顔を見られれば泣いてしまいそうだった。

「シて…いいぞ。」

「いいのか?」

「私がしてほしいんだ!」

微かに泣き声じみた声音で言うカガリにアスランは眉根を下げて答える。


「でも壊すかも。」

「…え?」

「カガリを壊すかも。」

一瞬、息が詰まるような間が開く。
だが、しばらくしてカガリはアスランの眼を真っ直ぐ見つめ、言った。

「私は壊れない。」

「あぁ、カガリは強いからな。」

投げやりでもなく、素直にそう答えたアスランにカガリは緩く首を振って答える。

「ううん、違う。」

「じゃあなんだ?」

「アスランは…優しいから。そうする前に自分を壊しそう。だから…壊すなよ。」




そう優しく、微笑むカガリは何もかも包み込むようで。

まるで何かの神聖な女神みたいな顔で笑うものだから。

そんな君を壊したら、確かに撥が当たるとアスランは頭の片隅で笑いながら思った。



「何があってもずっと、傍にいるから」

「あぁ、居てくれ。約束、な」






そこに、決して嘘はなかった。









けれど、この世に真実などありもしないのだ。






2006年05月21日(Sun)23時53分
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はじめまして、
こちらのショート小説読まさせて頂いたのですが、
とっても良かった!!
です。
いきなりコメント、ごめんなさい(>_<)



こんばんわ!

はじめまして、みぅ様。くまですー(´∀`)

私の拙い小説をそんな風に言って頂けるなんて…!
本当にありがとうございますvvとっても嬉しいです。
私もURLのほうからみぅ様のブログに伺わせて頂いたのですが、みぅ様の描かれるユフィやアスランやキラ…とっても素敵でした!
特にユフィがとっても綺麗で…v思わず惚れぼれしてしまいました(´∪`●)
またぜひぜひ素敵な絵を見に行かせて頂きますね。

では②、わざわざコメントをありがとうございました~!



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